犬の脂漏症のタイプは2つ!皮膚病との関連性とサプリメントの選び方【動物看護士執筆】

犬の脂漏症のタイプについて

執筆者:ナルセノゾミ先生

動物看護士、愛玩動物飼養管理士

わたしたち人間も、一人ひとりの肌質は違いますよね。
「脂性肌」「混合肌」「乾燥肌」「敏感肌」など個人差があります。

犬の皮膚も人間の肌質と同じで「脂漏症」という皮膚の状態を指す言葉があります。

「愛犬の皮膚がベタベタして悪臭がする」
「乾燥で被毛がパサつき、フケがすごい・・」

もしかすると、脂漏症になっているのかもしれません。

脂漏症のタイプと原因、対処法について解説します。

脂漏症のタイプは2つ

犬の脂漏症には次の2つのタイプがあります。

1.カサカサタイプの乾性脂漏症
2.ベタベタタイプの脂性脂漏症

症状は対照的で、発症する原因も1つではありません。

ここでは、脂漏症による症状と特徴、好発犬種について解説していきますね。

乾性脂漏症

乾性脂漏症は、皮膚や被毛が乾燥し、毛ヅヤがなくなりフケがみられることが特徴です。
常に皮膚が乾燥している状態でフケが一部分、または体全体で大量に出て、軽い痒みを伴います。

被毛がパサつくと途中で切れやすくなったり、皮膚の乾燥によって紫外線やハウスダストなどの外部刺激に影響を受けやすくなることもあるため、「フケだけだから」と言わずに改善を目指す必要があります。

好発犬種はシェパード、アイリッシュセッター、ドーベルマン、ダックスフンドなど。これらの犬種でも個体差はありますが、乾燥しやすい体質の場合は気を付けましょう。

脂性脂漏症

脂性脂漏症は皮脂が多く分泌されるため、ベタベタしたり、痒みやフケ、発疹などがみられます。
また、過剰に分泌された脂が黄色っぽい塊となって皮膚や被毛につくようになることもあり、体臭も強くなります。

強い痒みで犬が体を掻きむしり、二次症状として出血や脱毛、かさぶたになり皮膚がより敏感になってしまう悪循環に陥るケースが多いです。

遺伝的に皮脂の分泌の多い犬種に多く発症するため、コッカースパニエル、ラブラドール、ウエスティ、シーズー、パグ、秋田犬などに多いと言われています。

脂漏症になる原因と治療、対策

「脂漏症」は皮膚症状のことで、病名ではありません。
脂漏症になってしまった場合、原因を特定し対処する必要があります。

一口に脂漏症と言っても、症状の度合いや原因は違います。
症状に合わせて、治療と対策をとっていきましょう。

遺伝的要素

脂漏症になりやすい犬種は、遺伝的に「皮脂の分泌が多い」「皮膚が弱い」など皮膚トラブルを抱えやすい体質を持っていることがあります。

しかし、持って生まれた体質がまったく変わらないということはありません。
食事のバランスや栄養補給によって、体の中から体質を変えていくことは可能です。

遺伝的な要因を持っている場合、脂漏症を放っておくと慢性化しやすいため、早めに対処することが大切です。

栄養バランスの乱れ

食事のバランスや体質にドッグフードが合っていない場合、皮脂の分泌バランスが崩れ脂漏症になることもあります。

ビタミンAは皮脂の分泌を調整するはたらきがあり、フケの抑制に効果が期待できます。
また、亜鉛はビタミンAを運搬するはたらき、新しい細胞を生成するために必要な栄養素。
ビタミンAと一緒に取り入れるといいですね。

ビタミンA:にんじん、レバーなど
亜鉛:牛肉、鹿肉、煮干し、ゴマなど

更に、皮脂をコントロールするためにω3系脂肪酸であるα-リノレン酸には、皮膚の水分量を保つはたらきがあり、脂性・乾性ともに皮膚のバリア機能を高めるために必要不可欠な栄養素です。
大豆油、亜麻仁油など、植物由来の油に多く含まれています。

皮膚炎(マラセチア皮膚炎、膿皮症など)

細菌や真菌の感染によって皮膚炎を引き起こしている場合、皮膚のバリア機能が低下し皮脂が過剰に分泌されたり、反対に乾燥したりして脂漏症になることがあります。

元々の体質で脂漏症になり、二次的にこれらの皮膚炎を引き起こすこともあれば、反対に皮膚炎によって脂漏症の症状があらわれることもあります。

マラセチア皮膚炎や膿皮症は、皮膚上にもともといる菌が異常繁殖する皮膚病です。
免疫低下には病気やアレルギーなどが隠れている可能性が高く、原因に対してアプローチをしないと脂漏症も良くなりません。

アレルギー

アレルギー体質のワンちゃんの場合、アレルギー反応として脂漏症が見られることがあります。

皮膚のバリア機能は低下し、免疫も低下している状態ですが、アレルギーそのものを完治させることは難しく、アレルゲン物質の特定とそのアレルゲンを避けて生活する必要があります。

更に、皮膚や被毛の状態を整えるため、食事やサプリメントなどを取り入れながら体質改善を目指します。

ホルモンの影響

甲状腺や副腎皮質ホルモンなどの影響により、皮膚のターンオーバーが早まったりそのバランスが崩れることで、脂漏症になることがあります。

また、発情時は出産前後などで性ホルモンが分泌される時期は、脂漏症のような皮膚トラブルを抱えることも。

病気によるホルモン異常の場合は、病気の特定と治療を並行することが大切です。

誤ったスキンケア

定期的なシャンプーやブラッシングで、犬の体を清潔に保つ必要があります。

不潔にしておくことはもちろん、誤ったスキンケアでも脂漏症を引き起こす原因となることがあります。

・過剰なシャンプー
・もつれ、毛玉を放置
・シャンプー剤が体に合わない
・皮膚を傷つけるブラッシング

誤った方法のスキンケアがキッカケとなり脂漏症となることもあるのです。

シャンプーは月1~2回、ブラッシングも犬種によっては毎日~週1回ほど。
神経質になる必要はありませんが、元々皮膚が弱い、アレルギーなどを起こしやすいワンちゃんの場合は注意してあげたいですね。

脂漏症は皮膚トラブルをかかえやすい?かかりやすい皮膚病と要因

脂漏症のワンちゃんは、皮膚や被毛のトラブルを抱えやすいと言われています。
肌のターンオーバーやバリア機能が正常にはたらかないと、普段は無害な細菌や真菌が悪さをする原因となるからです。

脂漏症が引き金になりやすい、代表的な皮膚病とその特徴をご紹介します。

マラセチア皮膚炎

マラセチアは、犬の皮膚に常にいる真菌です。

マラセチアは皮脂を好みます。
体温で温かく、皮脂による湿気も多い脂性脂漏症のワンちゃんの皮膚は、マラセチアにとって繁殖するにはうってつけの環境になります。

皮膚のバリア機能が正常であれば、多少皮脂の分泌がが多くても問題ありませんが、何かしらの原因が合わさり免疫機能が低下すると、あっという間にマラセチア菌に侵されてしまうのです。

膿皮症

膿皮症もマラセチアと同様、皮膚の常在菌であるブドウ球菌などの細菌に感染することで起こる皮膚炎です。

切り傷、外傷から入り込んだり、ぶつぶつが出来たりと患部が膿むようになります。

脂漏症の痒みによって体を掻き傷ついた皮膚から感染したり、脂性脂漏症であれば、ジメジメとした環境が細菌の繁殖を促進してしまうこともあります。

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌はカビの一種。
乾燥した環境でも、皮膚のバリア機能が低下したり、すでに皮膚糸状菌に感染している動物や人と接触することによって感染し、発症します。

乾燥に強い特徴のある皮膚糸状菌は、乾性脂漏症で皮膚が弱っている場合などに感染しやすくなります。

皮膚糸状菌は、人間や一緒に暮らす動物にも感染する人獣共通感染症です。
皮膚糸状菌はしぶとく再発もしやすいため、皮膚は脂が多すぎても少なすぎてもリスクがあるのです。

サプリメントの選び方と注意点

犬用のサプリメントは多くのメーカーから販売されています。
あまりに数も多く、どのサプリメントを選べば良いかわからないという飼い主さんも多いのではないでしょうか。

サプリメントは愛犬にとって必要な栄養素を補うための「栄養補助食品」。
選び方のポイントをしっかり抑えて、愛犬に合ったサプリメントを取り入れましょう。

原材料をチェック

サプリメントのパッケージ裏には、サプリメントの原材料が割合の多い順に掲載されています。

大々的にアピールされている原材料でも、よく確認すると別の原材料が多く使われているといったこともあります。

サプリメントは栄養補助食品ですので、どんな原材料が使われているのか、人工添加物の有無なども確認してから購入するようにしましょう。

有効性・安全性のデータがあるか

サプリメントは「食品」扱いのため、効果や効能を断言することはできません。
しかし、実際に犬に与えて効果の有無を検証しているサプリメントも多くあります。

動物病院や大学などで、有効性・安全性が確認されているものも増えていますので、謳い文句だけで判断せず、きちんと調べて納得したサプリメントを選びましょう。

また、体験談や口コミなども調べてみることをおすすめします。

まずは3ヶ月継続する

サプリメントは医薬品ではない分、効果を保証したり即効性を謳うものではありません。

そのため、3ヶ月は継続してみることをおすすめします。

細胞は毎日生まれ変わっていますが、犬の皮膚のターンオーバーは約21日。
ターンオーバーを3~4回繰り返すと、体の細胞は完全に入れ替わると言われています。

特に、皮膚や被毛の状態は、どんな薬を使ったとしても今日明日で見違えるように変わることはありませんよね。

3ヶ月ほど続けてみて、少しでも効果を感じるようであれば継続してみましょう。

脂漏症は原因を突き止めて体質改善を目指そう!

脂漏症は持って生まれた体質であることも多く、動物病院では症状を抑えるための治療もありますが、根本的な完治は難しいとされています。
そのため、皮脂の分泌を調整するために必要な栄養素を食事やサプリメントから摂取し、体質改善することを目指すことが大切です。

また、脂漏症の場合はマラセチアや膿皮症、皮膚糸状菌による皮膚炎にかかりやすい傾向があるため、適切なスキンケアと清潔な環境を心がけ、皮膚トラブルから愛犬を守ってあげたいですね。

ドッグフードでは足りない栄養素は、手作り食やサプリメントなどを使って補っていきましょう。

執筆者:ナルセノゾミ先生
動物看護士、愛玩動物飼養管理士

仙台総合ペット専門学校で、動物看護・アニマルセラピーについて学ぶ。
在学中は動物病院・ペットショップの他、動物園での実習も経験。
犬猫、小動物はもちろん、野生動物や昆虫まで、生粋の生き物オタク。
関わる動物たちを幸せにしたい、をモットーに活動しているWebライター。