治りにくい犬のアレルギー性皮膚炎の原因・症状、予防する4つのポイント【動物看護士執筆】

犬のアレルギー性皮膚炎について

竹内Coco先生
動物看護士、動物病院勤務

人でもアレルギー性皮膚炎は、よく知られている皮膚病です。そして、人と同じように犬にもアレルギー皮膚炎は起こります。愛犬が体を痒がっていたり、皮膚が赤くなったりはしていませんか。そんなときは、アレルギー皮膚炎が疑われます。

アレルギー性皮膚炎とは、なんらかの物質に体が反応し、皮膚に炎症が起こることです。原因を特定することができれば、アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)の除去により完治することもできます。

ただ、原因が見つけづらいことや、原因を全て取り除くことが難しい場合もあり、長年付き合っていかなければならない場合も多いものです。

アレルギー性皮膚炎の症状

  • 痒み
  • 赤み
  • 湿疹
  • 脱毛

主にこれらの症状が挙げられます。特に激しい痒みをともなうことが多く、愛犬がしきりに足で掻いていたり、噛んでいたりすることが多いです。

この行動により、皮膚がさらに炎症を起こし二次感染を起こしてしまうことも。なるべく早く治療を開始してあげましょう。

発症部位

発症部位はどのようなアレルギーによって炎症を起こしているかによっても変わってきます。食べ物によるアレルギーの場合は全身にも出ますが、主に口の周りや肛門周囲に出ることが多いです。

花粉やダニ、カビなどが原因で起こるアトピー性皮膚炎も全身に出ますが、特に顔面、耳、四肢、腹部などに現れることが多いようです。そのほか、接触性のアレルギーの場合は触れた箇所に痒みが出ます。

犬のアレルギー性皮膚炎の原因

犬のアレルギー性皮膚炎の原因は主に

  • アトピー性皮膚炎
  • 食物アレルギー
  • 接触性アレルギー
  • ノミアレルギー
    です。

その中でもほとんどが、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーもしくはその2つの混合型です。病院に皮膚トラブルで来るワンちゃんのうち、寄生虫によるものを除けばそのほとんどの原因がこの2つとなっています。

○アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、花粉やダニ、カビなどのハウスダスト(環境要因)に対してアレルギー反応を起こし、皮膚に炎症が起こることをいいます。原因が分かっても、なかなか全てを取り除くことは難しく付き合っていかなければならない皮膚炎です。

○食物アレルギー

食べ物が原因となるアレルギーを食物アレルギーと言います。原因となるのは主にタンパク質で、牛肉、小麦、鶏肉・卵・魚など様々。食物アレルギーの場合には皮膚炎の他に、嘔吐や下痢を起こすこともあります。

○接触性アレルギー

食べ物やハウスダスト以外のアレルギーです。なんらかの物質が皮膚に触れることでアレルギー反応を起こしてしまいます。例えば金属アレルギーは人でも有名ですよね。

ステンレスや陶器にアレルギーがある場合は、食事のときに触れることで口周りにアレルギー反応が起こります。カーペットやじゅうたんなどの繊維が原因のときには、お腹や足などに痒みがでます。なんらかのアレルギー物質が触れた部分に症状が出るのが接触性皮膚炎です。

○ノミアレルギー

ノミに対してアレルギーを持っている犬もいます。これはノミの唾液にアレルギー反応を示すもので、ノミに噛まれることで皮膚炎を起こしてしまいます。

アレルギー性皮膚炎になりやすい犬種

アレルギー性皮膚炎は犬種を問わず、比較的どのような犬にも起きるものです。また、遺伝的にアレルギーを起こしやすい因子を持っている子もいます。アレルギー性皮膚炎の中でも、アトピー性皮膚炎に関しては、なりやすい犬種がいます。

柴犬・ダックスフント、トイプードル、ウエストハイランドホワイトテリア、ヨークシャ・テリア、レトリーバー系などが挙げられます。

アレルギー性皮膚炎の治療方法

アレルギー性皮膚炎には様々な原因があることはご紹介した通りです。治療法もそれぞれ原因によって変わってきますが、主に原因の除去と痒みのコントロールがメインとなります。

アトピー性皮膚炎は、ハウスダストが原因となるアレルギー。なかなか全てを除去するのが難しいものです。治療としては、痒みを減らしてあげられるような治療を行います。

痒みが強い場合にはステロイド剤を処方することもあります。また、免疫抑制剤などが使用されることもあるでしょう。これらには副作用もあるので、獣医さんがきちんと診察をしたうえで安全な容量を処方します。

また近年、アトピー性皮膚炎に大変有効とされるアポキル錠という薬が発売されました。ステロイドほどの副作用もなく、取り入れている動物病院が増えています。

痒みのコントロールとして、シャンプーも定期的に行います。症状や皮膚の状態によっても変わってきますが、アトピー性皮膚炎を起こしている場合は皮膚のバリア機能の低下、皮膚の乾燥などが目立つので保湿系のシャンプー剤を使用することが多いでしょう。

○食物アレルギーの治療法

食物アレルギーの治療法は、原因の除去が一番です。アレルギーの原因となっている食べ物さえ分かり、それを除外することができれば症状は出ません。

アレルゲンの特定方法としては、血液検査を行うか、除去食試験を行います。除去食試験とは、現在食べているものの中にアレルギーを起こすものがあるとして、それ以外の物質からタンパク質を摂る方法です。

例えば現在食べているものが小麦や牛肉を使ったフードなのであれば、それ以外のアレルギーを起こしにくいタンパク質を使用したフードに切り替えます。フードを変えてみて効果があるかどうか見極めてアレルゲンを除去していくのが除去食試験と呼ばれているものです。

稀にアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの混合型の場合があります。そのときには、除去食により食べ物による皮膚炎は治まりますが、アトピー性皮膚炎の方が残ることもあります。

○接触性アレルギーの治療法

接触性アレルギーの場合も原因となる物質の特定が重要となります。特定ができ愛犬に触れさせないようにすることができれば症状は出ません。よくあるのが食器の器の素材です。こういったときには、器の素材を変えてあげるだけで症状が改善することも多いものです。

○ノミアレルギーの治療法

ノミが原因となっている場合はノミを駆除することが治療となります。ノミ駆除剤であるスポット薬を皮膚に垂らしたり、食べるタイプのものを与えることでノミを駆除します。

また痒みを抑えるため塗り薬を塗布します。二次感染を起こしてしまっているときには、抗菌薬や抗ヒスタミン剤を同じく塗ったり、飲ませたりします。

アレルギー性皮膚炎のときに気をつけたいこと

アレルギー性皮膚炎の時に注意したいことがいくつかあります。次のことに気を付けて、なるべく治療がスムーズに進むようにしてあげましょう。

○シャンプー

アレルギー性皮膚炎の症状に強い痒みがあります。愛犬がずっと痒そうに体を掻いたり、噛んだりしているのを見るとかわいそうになりますよね。そこで、体を清潔にしてあげれば治まるだろうと考えてシャンプーをしすぎてしまう方がいます。

ですが犬のシャンプーは、特定の皮膚炎でない場合は月1~2回が適度な回数です。あまりにシャンプーをしすぎてしまうと、必要な皮脂まで落としてしまい肌が乾燥してしまいます。

これにより、皮膚のバリア機能も低下。さらに皮膚トラブルを招いてしまうこともあるのです。もちろん皮膚を清潔に保ってあげることは大切ですが、過剰に洗いすぎないように注意してあげてくださいね。

アレルギー性皮膚炎とひとくちに言っても、原因や症状によって使用するシャンプーは変わります。必ず獣医師さんに相談して、愛犬の皮膚状態に合ったシャンプーを処方してもらい、指定された回数だけ洗ってあげましょう。

また、弱っている皮膚には細菌や真菌(カビ)が繁殖し二次感染を起こしやすくもなります。特に湿った場所には菌が増殖しやすいので、シャンプーのあとはしっかりと乾かしてあげることも重要です。

○食事

食物アレルギーによる皮膚炎を起こしている場合には食事療法が行われます。その際、食事以外におやつなどをあげてしまったりすると、アレルギーの原因が除去しきれないことがあります。

また、除去食試験ではフード以外のものをいろいろと与えてしまった場合、アレルギーの原因となる食べ物を見つけられなくもなってしまいます。

家族の協力もとても重要なこと。病院に来られる飼い主さんの中にも、「主人がすぐおやつを与えるのよ」などとおっしゃる方が多いものです。おやつを与えるのは、愛犬とのコミュニケーションの時間の一つでもあり、楽しみですよね。嬉しそうに食べる顔が見たくてついついあげたくなってしまいます。

気持ちはとても分かりますが、治療が長引いてしまうと愛犬もかわいそうです。除去食試験を行っている間は他の食べ物を与えることは、グッと我慢しましょう。

○室内の掃除

ハウスダストが原因のアトピー性皮膚炎の場合には、室内の掃除も重要です。花粉やカビ・ダニなどが原因となるのでなるべくこまめに掃除をしましょう。

こういった物質を完全に取り除くことは大変難しいですが、掃除をすることでハウスダストを抑えることができます。また、可能であれば空気清浄機を置くのもおすすめです。

○ノミの駆除

ノミアレルギーを起こしてしまったということは、愛犬にノミがついていたということです。ノミの成虫自体は駆虫剤を使用することで簡単に駆虫できます。ですが、やっかいなのが卵。

ノミが部屋に卵を落としていると、それがまた後日孵化し、犬についてしまうというサイクルが生まれてしまいます。ノミの卵は部屋の中でも暗く見つからない場所に入り込むことが多く、掃除では完全に駆虫するのが難しかったりもします。

そのため完全に家から駆除するためには、バルサンなどの駆除剤を使用することが必要です。

アレルギー性皮膚炎にならないために、予防や日ごろのケアの4つのポイント

アレルギー性皮膚炎はどんな犬でも起こります。発症してしまうと長期間付き合っていくことにもなる皮膚病なので、なるべくかからないようにしてあげたいもの。完全に予防することは難しい皮膚炎ですが、気を付けたいポイントが4つあります。

次のことに注意して、なるべくアレルギー性皮膚炎から愛犬を遠ざけてあげてくださいね。

①室内を清潔に

室内をなるべく清潔に保ちましょう。花粉やカビ・ダニといったアレルギー物質を除去することが予防に繋がります。また、愛犬が寝ているベッドや毛布などもこまめに掃除・洗濯をしてあげましょう。

②予防薬を忘れずに

ノミの予防薬は必ずつけて出掛けましょう。ノミに噛まれてアレルギーを起こしてしまうとかわいそうです。それに先ほどもお伝えしたように、一度ノミを家の中に入れてしまうと大変やっかいなもの。

定期的にノミ・ダニ予防薬を塗布するだけで予防できるものなので、少しでもお散歩に出掛けるのであれば予防薬をつけてあげましょう。

③ブラッシングをこまめにする

こまめにブラッシングをしてあげることも予防に繋がります。散歩から帰ったらノミがついていないかをチェックすることもできますし、皮膚に異常があればすぐに見つけることもできます。

早めに治療を始めることは、症状を早く抑えるためにも重要なポイントです。日ごろから愛犬とのコミュニケーションとして、ブラッシングはこまめに行ってあげてくださいね。

④疫力・バリア機能の低下を防ぐ

アレルギー性皮膚炎を起こしている犬は、生まれつき皮膚のバリア機能が低いことが多いものです。また、アレルギー性皮膚炎を起こすことで弱った皮膚に二次感染が起こってしまうこともあります。

皮膚のバリア機能を正常に近づけるには、食事やサプリメントがおすすめです。EPAやDHAなどの必須脂肪酸を多く含んだ療法食は皮膚のバリア機能を修復する効果が期待できます。

また、免疫力を上げるには、免疫細胞を活発化させるβ-グルカンを含んだキングアガリクスなどのサプリメントがおすすめです。

アレルギー性皮膚炎のまとめ

アレルギー性皮膚炎は犬がなりやすい皮膚トラブルです。なかなか完全に予防することは難しいものでもあります。長期的に付き合っていくことが多いのも特徴。

皮膚の痒みはもちろん、通院もワンちゃんにとってはストレスです。なるべく予防できることはしてあげましょう。そして愛犬の皮膚の状態はこまめにチェックしてあげましょう。

痒がっていたり、赤くなっているようであればアレルギー性皮膚炎の可能性もあります。なるべく早く動物病院を受診してあげてくださいね。

執筆者:竹内Coco先生

動物看護士、動物病院勤務大阪コミュニケーションアート専門学校ペットビジネス科ペットトリマーコース(現在の大阪ECO動物海洋専門学校)卒業。ペットショップ勤務を経て、現役動物看護士。動物病院で勤務している立場から、「正しい知識を持ってペットと幸せに暮らしてもらいたい」という気持ちで正確な情報をお届けします。